2008/05/31

姓と名

ビルマ人には姓がない。例えば、アウンサンスーチーさんの場合は、「アウンサンスーチー」すべてが名で、姓といったものは含まれていない。

そこで、日本に暮らすビルマ人は、外国人登録などの行政手続きの際に少々困った事態に直面する。

なぜなら、たいていどの書類にも姓と名を記せ、と書いてあるからだ。

そこで、うっかり名前の前半部分を姓の欄に、後半部分を名の欄に記入して、後で欧米風に姓と名をひっくり返されて、おかしな名前で登録されてしまった人もいる。

近頃では、役所で手続きするビルマ人が増えてきたため、ビルマ人には姓がないという事実が行政の現場に、周知されるようになったようだ。

先日あるビルマ国籍カチン人が役所に行って書類に名前を記入した。書類を見た職員、相手がビルマ人だと知るや、マニュアルを取り出してビルマ人のページを見て言った。

「ビルマの方ですよね、姓の欄に記入してありますが、ビルマ人は姓の欄には記入しなくてもいいのですよ」

そして、姓の欄に書かれた文字を消して、名前の欄に書くようにと、助言した。

だが、その職員は知らなかったのだ、カチン人はビルマの中で例外的に姓をもつ民族であることを。

そんなわけで、そのカチン人は、職員の親切により日本で姓を登録し損ねたのであった。

(もっとも、カチン人はビルマ本国においてすら、自分たちの重要な文化的な印である姓を蔑ろにされている。つまりビルマ政府による国民登録や住民登録で、カチン人の姓が記載されることは滅多にないのである。)