2009/09/26

ありふれた話

あるカレン人の夫婦のうち、妻が今、品川の入管に収容されている。

2人には1歳9ヶ月になる息子がいて、普段からあまりものを食べない子だったが、母親が収容されて以来、ますます小食になって父親を悩ませている。しかも、よく知らないが持病があるそうだ。

妻の代わりに自分を収容してくれ、と夫は入管で頼んだが、もちろん話を聞いてくれる相手ではない。

仕方がないのでこどもを抱えて毎日のように面会に行く。もっとも、妻と面会できるのは1日に1回だけ、しかもたったの10分なのだが。

品川で面会をしたことのある人ならわかると思うが、面会をする人は1階で手続きを済ませると、7階に上がり、狭い待合室で自分の番が来るのを待つ。

どれくらい待つかは混み具合にもよるが、いつかは職員に名前を呼ばれるときがくる。職員からカード・キーを受け取り、奥の廊下へと向かう。廊下の左右には小さな面会室が並んでいて、カード・キーはそのうちのどれかを開くようになっている。

その日すでに面会を終えた父親が、この待合室で待つ知人に用があって、息子を連れて7階に戻る。

待合室に入るやいなや、息子が「お母さん、お母さん」と父親を奥の廊下のほうへと急かした。