2009/11/25

森を見て木を見ない話(9)

9.死刑宣告

主催者となった組織は、有名で、偉大で、資金も人材も潤沢だ。人権に関する熱心かつ広範囲に及ぶ活動から、世界中の人々から尊敬を集めている。まさに人権の総本山と呼ぶにふさわしく、人権に関して過誤を犯すことなどないかのような神聖な無謬性すら身にまとっている。だが、このような地球的規模で立派な組織でも、やはり間違いを犯すのだと、このとき知った。その原因はといえば、この組織が適切な情報収集と分析をしなかった点にある。とはいえ、間違いは誰にでもあることだ。ぼくが取り上げようとしている点はそこではない。

ぼくが極めて興味深くまた皮肉だと思ったのは、人権の体現者ともいえるこの立派な組織が、その売り物の人権を用いて、ある小さな集団の構成員の命を危険にさらしたということである。

担当者が用いた理屈はこうである。

前提1 OKA-JapanはKNFの隠れ蓑の団体である。
前提2 KNFは人権侵害団体である。
結論 ゆえにOKA-Japanは人権侵害団体である。すなわち、われわれはこのような人々と同席したくない。

もちろん前提1は誤りである(とぼくは主張している)。前提2に関して、ぼくはその担当者に証拠となる資料を教えてほしいと頼んだが、返事はなかった。だが、これは正しいのではないかと思う。KNFはビルマ軍事政権と長い戦争を続けている。戦争の理由に関して、KNFはあくまでも民族を守るための戦いと語るが、戦争は戦争だ。そして、戦争は人権侵害のもっとも大きなものである。とはいえ、KNF-Japanそのものが人権侵害をしているかどうかはまた別に考察すべき問題ではある。

なんにせよ、前提2の真偽がどうであれ、前提1が偽である以上、この推論において結論が誤りであるのはいうまでもない。

だが、それにもかかわらずこの団体は、ある組織を人権侵害団体として誤認定してしまった。このような神聖な組織に反論の機会もなくそう裁定されることが、 OKA-Japanのメンバーにどのような影響を与えるか、わかっていただろうか? OKA-Japanにとって不本意なこの指定がたとえ内々なものであったとしても、その事実はビルマ人社会にあっという間に広まるということを、予測していただろうか? そして、ほとんどテロリストと名指されるに近いそのレッテルが、彼らの難民認定申請にどのような深刻な影響を及ぼすか、少しでも考えたことはあっただろうか? さらに、このけしからん濡れ衣によって難民と認められるのが遅くなったせいで、その分余計に、収容や病気に怯えながら不安定な状況で日本に暮らさなければならないこと、すなわち、それだけ人権を享受できずに生きなくてはならないことを、知っていただろうか? もっと突き詰めていえば、不確定な情報と噂を証人とする欠席裁判で下されたこの託宣が、送還されれば政府に殺されると主張する難民にとって、実質的な死刑宣告になりうることに気がついていただろうか?