2009/12/31

難民という言葉(1)

難民をビルマ語でいうとドウカディ。ドウカというのは「苦しみ、災難、不幸」という意味で、この語を感嘆詞のように用いて「何たる災難!」といった表現にもなるのだそうだ。

ビルマ人がなかなか難民認定申請に踏み切れなかったのは、ひとつにはこの語の持つネガティブなイメージが原因となっている、というようなことを以前、田辺寿夫さんがお書きになっているのを読んだこともあるし、また実際にビルマの人からも聞いたことがある。

もっとも、日本語の「難民」もその成り立ちは「難+民」だから、ビルマ語のそれとそれほど変わりがない。とはいえ、ビルマ語のドウカが日常的に使われるのに対して、「難」はそれだけでは使われないので、言葉の与えるインパクトからすればビルマ語の「ドウカディ」のほうが強烈そうだ。

語の作りの問題はさておくにしても、そもそも難民という言葉には否定的な印象がつきまとう。今はそうでもないだろうが、昔は難民と聞くと、ちょうどジョージ・ハリスンのバングラデシュ・コンサートのアルバム・ジャケット(旧盤)に出てくるようないわゆる第三世界の痩せた子どもを思い浮かべたものだった。この子どものイメージはあまりに強烈だったため、かつては「難民」というのは色黒で痩せた子に対するあだ名ですらありえた。