2010/10/21

民主化の木(1)

あるビルマの人から面白いジョークを聞いた。書くなといわれたが、どうしても書かずにはいられないし、それほど害があるとも思えない。

在日ビルマ人が品川のビルマ大使館に向けてデモを行うとき、たいてい出発点となるのは五反田南公園で、これは五反田駅前にある、小さいわりに木陰の多い公園だ。デモ参加者の集合場所として利用されているわけだが、8月8日のデモなどの大イベントとなると、参加者も千人を超え、公園には入りきれないほどになる。

デモ行進というものは、集まってすぐ出発というものではなく、その前に整列や演説会などが行われる。

公園の敷地いっぱいに列をなしている参加者に向けて、行おうとしているデモの意義、民主化に向けての決意表明、軍事政権にたいする批判、政治信条の開陳などが行われるのが、出発前の演説会で、政治指導者が前に立って檄を飛ばす。

このような場で演説するということは、政治指導者にとっても、またその人が代表を務める政治団体にとっても重要な機会なので、いつも5〜6人ぐらいの政治団体代表が入れ替わり立ち替わり登場することとなる。

五反田南公園にはひときわ大きな木が一本あり、これがいわば集会の中心の役目を果たしている。整列もこの木を起点にして行われるし、また演説者もこの木を背にして立つ。

さて、ある日あるデモの集会で、この木がこんなふうに言ったそうだ。

「演説する連中はコロコロ変わるが、お前たちの国は一向に変わらないな!」

こうしたジョークを喜ぶ人々がいる限りは、ビルマの民主化もまだ大丈夫という気がする。