2010/11/15

虫けらどもをひねりつぶせ(3)

ぼくはデモの列の前、各団体の参加者たちがそれぞれ吊るしている色とりどりの旗の横を歩いて行きました。本当は列の後を通りたかったのですが、人で一杯で入るのは無理そうでした。

通過する間に、前面に立つ知り合いたちが挨拶してくれたり声をかけてくれます。久しぶりに会う人もいて、いろいろと話したいこともあるのですが、通行の邪魔になるので呑気に立ち話などできません。しかも、歩いているのはデモの正面という目立つ場所です。いちいち挨拶なんかしていられません。なにしろ日陰の中の日陰から出てきたばかりですから、一刻も早くBRSAの旗に辿り着き、人ごみの中に隠れたい一心なのです。

目指す旗の手前で、BRSAの役員のサンダータウンさんに呼び止められました。彼女の後には事務局長のモーチョーソーさんもいます。ほっとしたのもつかの間、サンダータウンさんが、話が聞きたいみたい、というようなことを言います。なんだろうと思うと、ビルマ人の男性がノートを片手に脇に立っています。彼女がぼくの名前を告げると、その男性はノートにメモしました。

ビルマのメディアが何かコメントを求めているのだろう、と考えました。こうしたことは幾度か経験があるので、ぼくは男性がICレコーダーを取り出すのを待ちました。

ところが、彼はぼくを正面のほうに連れて行こうとするのです。このときぼくは理解しました。彼はあの「演説台」に引っぱり出そうとしていたのです。『虫けらどもをひねりつぶせ』、例の「敗残の巨人」がひり散らした高濃度のどす黒いウンコの中からから出てきたばかりのぼくを。