2010/11/17

虫けらどもをひねりつぶせ(5)

演説はたいして長いものではありませんでしたが、ここに全文を書き記せるほどはっきりと覚えてはいません。ただ、「選挙反対」関係の言葉からはじめることができたことだけは確かです。このこと、つまり軍事政権が行う選挙によって国はちっともまともにならないという政治的立場をBRSA代表として明確に伝えることはなによりも重要です。500人以上に膨れあがったBRSA会員の命運がかかっているといってもいいのです。

もうひとつ気を遣ったのは、美辞麗句を並べたり、虫酸の走る運動用語で塗り固めたり、わかりきったスローガンでズバリ決めてみたりといったことがないように、ということでした。こうした場では本当はそうした演説のほうがふさわしいし、かえってあっさりして喜ばれるぐらいなのですが、ぼくはどうしても何か変わったことを付け加えたくなります。普段むっつり黙っている分、口を開くとここぞとばかりという感じなのです。

しかし、実際は何を言ってもかまわないのです。眩しい世界に眼をぱちくりさせている無精髭の男が蚊の鳴くような声で話しても、誰ひとりとて耳を傾けないのが実情です。女性や民族衣装を着た人、ひときわ熱狂的な演説者が話し始めるやシャッターチャンスとばかりに突進してくる報道関係者にも、つかの間の休息もしくは別の被写体にじっくり取り組む機会をプレゼントしたという次第です。要するに、代表として前に立って何か話した、という事実が重要なのです。

「では、大きめの埴輪ではいかが?」と誰かが尋ねるかもしれません。つまり「大きめの埴輪にポータブル・オーディオとスピーカーを内蔵させたのを置いていたっていいのでは?」と。もちろんそうしてもいいのですが、そうすると大使館前は埴輪だらけになってしまうかも。もちろんこれは冗談で、やはり生身の人間に勝るものはありません。