2010/12/31

耳嚢

昔、ビルマ国にて戦ありて、日本兵あまた死にけり。久しくありて近しき村に子むまれし。その子、物心つける頃に、「吾、かの戦にて斃れし異国の兵の生まれ変わりなり」と語る。これを聞く村人驚かぬ者なし。

かの子、耳慣れぬことばもて話し、村人聞けば「これ日本語なり」と。又その身に大痣あり。もつて指して「吾の死ぬるは、この傷によればなり」といひてさめざめと泣けり。あるビルマ難民の語りしを、デタラメ古文にて記す。