2011/02/21

独裁の大義(5)

そして、もちろんこの主張が、非ビルマ民族たちにとっては歴史の歪曲であり、パンロン協定に懸けた自分たちの期待を裏切るものであるのはいうまでもない。

ここに非ビルマ民族のビルマ政府に対する抵抗の起源があるわけだが、その抵抗は必ずしも、ビルマ連邦からの分離独立を目的としているわけではない。

もちろん、それは常に選択肢のひとつではあるが、そのいっぽう、多くの非ビルマ民族は連邦の一部としてともに暮らしたいという強い願いを持っている。それにはいろいろな理由が考えられるが、ひとつにはどの民族も他民族の協力なくしてはやっては行けない、ということを痛感しているからだろう。

もっとも、これには例外がある。つまり、それはビルマ民族で、この民族だけは他民族の協力なしに自分たちはやって行けると信じ込んでいるのである。だが、この点に関しては日本民族も同様で、さらに実際は他民族、他国の協力なしには何一つ立ち行かないのに、そのことに気がつきもしないのもまったく同様だ(公平にいえば、カレン民族にもそんなところがある。これはもちろん、カレン民族の強さの表れでもあるにしても)。

なんにせよ、非ビルマ民族の抵抗活動とは、分離独立を求める闘い、というよりも、連邦制のあり方を問い直す闘いといったほうが正確なのである。非ビルマ民族の定番政治スローガンは「パンロン精神に帰れ」というものだ。

それゆえ、ビルマ軍事政権が非ビルマ民族を連邦を分裂に導く反乱分子として非難するのは、やはり非ビルマ民族の目から見れば、そして歴史的経緯から見れば、誤りなのである。非ビルマ民族にいわせれば、パンロン協定を尊重しないビルマ民族こそが連邦を分裂の危機にさらしているのであり、非ビルマ民族は連邦の唯一の根拠であるパンロン協定の当事者のひとりとして、この危機を解消する活動をしているにすぎない。