2011/03/25

孤独

在日カレン人難民が震災前にタイに旅行に行き、今夜帰ってくるという。ビルマから逃げる前に結婚した妻と再会して、バンコクで式を挙げたのだそうだ。その後、妻はビルマに帰り、彼は日本に帰ってから妻を呼び寄せる手続きをするのだという。

「何もこんな時期に帰ってこなくてもいいんじゃない。事態が落ち着くまで向こうにいればいいのに」

というと、教えてくれた人は「バンコクでひとりぼっちになって寂しいから帰ってくるんだって」

あくまでも印象だけど、日本人が一人旅を愛好するのに比べて、ビルマの人々はそれほど一人旅というものを好まないように思う。

義援金

海外カレン機構(日本)(OKO-Japan)で東日本大地震の義援金27万円を送る。

郵便局から日本赤十字に送ったのだが、10万円を超えると身分証などを見せなくてはならない。

また、10万円までは、個人名義でも、団体名義でも送金することはできるが、それ以上だと、団体名義で送りたい場合は、規約などを提出しなくてはならず、面倒だ。

そのときは、OKO-Japanの議長、事務局長、副事務局長と一緒に郵便局に行ったので、「一人9万円ずつ個人名で送金したら簡単だ」と提案すると、みんなで集めたお金なので、やはり会の名前で送りたいとのこと。

そこで規約を写して窓口に提出するが、議長の名前を確認するために会員名簿も出すようにといわれ、それを提出すると、会員名簿に記された住所が規約のものと違うといわれて、訂正して提出するなど、郵便局を3回往復する。

それでも最終的には会の名前で送金することができた。些細なことに思えるかも知れないが、ぼくの考えとしては、こうした経験を積み重ねていくことが、会そのものや在日カレン人の自信に繋がっていくのではないかと思う。

独裁の大義(7)

軍事政権にしてみれば、いかに非ビルマ民族を無力化するかこそが最重要課題、連邦制などくそくらえ、というわけだ。いや、それだけでは、チトものたりん、いっそのこと、奴隷みたいになってくれれば? 文句ひとつ言わずに、従順に、ルビーを掘ったり、砂金を求めて川に飛び込んだりしてくれれば? 非ビルマ民族居住地域で産出する富を、軍事政権に脅された非ビルマ民族が労苦して取り出し、家康が食べる、とそんな具合になってくれれば? 「バカヤロウ! 俺をあんまりうれしがらせるな」(『墓場鬼太郎』)。

かくして、非ビルマ民族の物であった富は、いまや軍事政権のものとなる。しかも、ビルマ軍事政権はまともな政府が見せかけでもやるようなこと、つまり富の分配だなんてことにうつつを抜かしはしない。「全額ポケットに」が軍人たちの合い言葉だ。なぜなら、この富のみが軍事政権の唯一の足場、根拠なのだから。

まずもちろんのこと、富は軍事政権に強力な軍事力を与える。これは非ビルマ民族居住地域における軍事政権の支配力をますます確固にし、その分ますます富をもたらす。

さらに富は、軍事政権に国内支配の正当性を与える。金があればなんでも可能だ。弱い人間は、貧しい人間は、どんなに軍事政権を憎んでいても、すがりつかずにはいられない。なぜなら、軍事政権以外に富を得る手段はないのだから。

また、富は国際的な圧力を無効化し、制裁をはねのける力を与える。実際、制裁なんてどこ吹く風。中国だって、ロシアだって、インドだって、タイだって、日本だって、韓国だって、ビルマが儲かる、ときちゃ、もう気もそぞろだ。制裁どころか手を差し伸べたいぐらい。互いに牽制し合って。口じゃいろいろ言うが、軍事政権がこのまま続いてくれた方が、だなんてこっそりみんな思っている。

まったく、軍事政権と富は一心同体だ。この富無くしては、軍事政権は存在しえず、また軍事政権無くしては、この富は存在しえない。軍事政権と富とが分かちがたく融合すればするほど、軍事政権にとっては願ったり叶ったり。なにしろ、軍事政権を否定することはできても、富は否定することはできないから。

アウンサンスーチーだって? 民主化運動だって? 確かにスーチーさんはすごい人物だが、彼女は決してビルマ変革のキーパーソンなんかじゃない。 スーチーさん抜きでビルマの政治を語ることなんていくらでもできる。本当のキーパーソンは非ビルマ民族だ。ビルマの変革は、これらの民族がいかに軍事政権と富とを引き離すかにかかっているのだ。(おわり)

2011/03/17

カナダからの手紙

よその国から見ると、災害はあたかも全国津々浦々に広がっているかのごとくで、心配した外国の友人からメールや電話をもらった。

カレン人の友人でカナダに暮らす夫婦がいる。夫はタイ国境の難民キャンプ出身で、妻は日本で働いていたことがある。このふたりがカナダに辿り着くまでは、「波瀾万丈」的な物語があるのだが、それはさておくとしても、久しぶりにメールをもらったらこんな風に書かれていた。

「近頃、引っ越しました。わたしたちふたりには大きすぎる家です。日本の放射能のことを心配しています。部屋はあるので、いつでもカナダまで逃げてきてください」

親切にも、新居の写真まで添付してくれていた。

2011/03/16

風聞

●在日ビルマ難民の多くは首都圏に暮らしているので、地震と津波による被害の話は今のところ聞いていない。しかし、ほとんどの難民がアルバイトのため、長期の休業による収入の激減、もしくは解雇に対する不安が広がっているとのこと。

●難民認定申請を取りやめて帰国を考えているビルマ人もいるとのこと。

●震災後、仙台から5人のビルマ人が東京に逃げてきたが、住む所もないので苦労しているとの話。

●在日ビルマ大使館の窓口が閉まっている、との噂。

2011/03/15

ない方が気になる

外務省発表によれば、今のところ、ビルマからの支援申し入れはない模様(ASEANはともかくとして)。

(追記:3月16日付け発表でビルマの名前が入った。)

(以下外務省発表)

諸外国等からの支援申し入れについて(東北地方太平洋沖地震)(平成23年3月14日17時00分現在)
平成23年3月14日

3月11日14時46分頃発生した東北地方太平洋沖地震に関し,14日17時00分現在,以下94の国・地域及び9つの国際機関から支援の申し入れがありました(50音順)。

(アジア)
インド,インドネシア,韓国,カンボジア,シンガポール,スリランカ,タイ,中国,ネパール,パキスタン,バングラデシュ,東ティモール,フィリピン,ベトナム,マレーシア,モルディブ,モンゴル,ラオス,台湾,香港,ASEAN,


(大洋州)
オーストラリア,ニュージーランド,


(北米)
米国,カナダ,


(中南米)
アルゼンチン,ウルグアイ,エクアドル,エルサルバドル,キューバ,コロンビア,スリナム,チリ,ニカラグア,パナマ,パラグアイ,ブラジル,ベネズエラ,ペルー,ボリビア,ホンジュラス,メキシコ,


(欧州)
アイスランド,アイルランド,アゼルバイジャン,アルメニア,イタリア,ウクライナ,ウズベキスタン,英国,エストニア,オーストリア,オランダ,カザフ スタン,ギリシャ,キルギス,グルジア,コソボ,スイス,スウェーデン,スペイン,スロバキア,スロベニア,セルビア,タジキスタン,チェコ,デンマー ク,ドイツ,トルクメニスタン,ノルウェー,ハンガリー,フィンランド,フランス,ブルガリア,ベルギー,ポーランド,リトアニア,ルーマニア,ルクセン ブルク,ロシア,EU,

(中東)
アラブ首長国連邦,イスラエル,イラク,イラン,オマーン,カタール,クウェート,トルコ,ヨルダン,

(アフリカ)
ジブチ,チュニジア,南アフリカ,モロッコ,


(国際機関)(アルファベット順)
赤十字国際委員会(ICRC),国際移住機関(IOM),国際電気通信連合(ITU),国連人道問題調整部(OCHA),国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR),国連教育科学文化機関(UNESCO),国連児童基金(UNICEF),世界銀行,国連世界食糧計画(WFP)

天罰

いつの地震の話かは忘れてしまったが、あるビルマの人が語るには、日本が地震の被害にあったとき、ビルマ軍事政権はこんなことを言ったらしい。

「日本は仏教をまともに信仰しないダメな国だから、こんな目に会うのだ」と。

それに引き替え、我らビルマの国はなんて素晴らしいんでしょ、というわけだ。

今回の地震でそんなことを思い出していたら、石原慎太郎氏もこれにまったく同感だという。

「大震災は天罰」「津波で我欲洗い落とせ」石原都知事

石原慎太郎・東京都知事は14日、東日本大震災に関して、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べた。都内で報道陣に、大震災への国民の対応について感想を問われて答えた。

発言の中で石原知事は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と指摘し た上で、「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」と話した。一方 で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。

石原知事は最近、日本人の「我欲」が横行しているとの批判を繰り返している。 
(asahi.com, 2011年3月14日19時34分. http://www.asahi.com/national/update/0314/TKY201103140356.html) 

おそらく、今回東京が津波に襲われなかったのは、石原都知事の津波のように高い人徳、我欲に対する熱狂的な攻撃によるものなのだろう。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

(偉大なるかな天! 天の配剤により自分の口で自分を地獄に堕とすという奇天烈な天罰を受けたこの都知事をわたしたちは忘れない。)

不運

イギリスのテレビ局BBCが、番組の中で二重被爆者の山口彊さんを「世界一不運な男」としたことが最近問題となった。具体的にどのような取り上げ方をしたのかはわからないが、広島や長崎で被爆した人々やその家族にとっては憤ろしいものであったようだ。

でも、そうであっても、なんか笑ってしまうんだよね、この途方もない不運には。もちろん、その笑いは人によっては不謹慎なものと映るに違いないのだけど、それだけでは切り捨てることのできない陽性の響きがあるみたいで。

3月11日の地震のあと、あるカレンの女性と電話で話したのだが、彼女はこんなことを言った。

「ビルマの家族もわたしたちのことをすごく心配していて、向こうから見ると、まるで日本全部が津波に飲み込まれたみたいに見えるらしくて、それで、インターネットで連絡が取れたときは、大喜びで。でね、いとこがこう言うの、お前はナルギス・サイクロンで飛んだ目にあって、それで逃げた日本でまたひどい災害に遭うとは、なんて不運な女なんだって笑ったの、もちろん冗談でね」

これが笑い話になるのは、彼女が生きているからである。

二重の被爆が笑いを生み出すとしたら、それはまさしくそうした体験をした人が極端な不幸にもかかわらず生き延びたからに違いない。死んでしまったならば、そもそも笑う気にすらならない。

人間の生を肯定し、喜べるときだけ、途轍もない不運は笑い事となる。明るい響きを帯びる。

笑うなんて金輪際不可能に見える今回の地震だが、それでも生き延びた人々は、再会を果たした人々は笑うことができる、生を喜ぶことができる。そうした笑いが一つでも多ければいいと思う。

2011/03/14

東北地方太平洋沖地震日本にいる外国人のための情報

東北地方太平洋沖地震 日本にいる外国人のための情報

とうほくちほうたいへいようおきじしん
にほんにいるがいこくじんのためのじょうほう

Tohoku Chihou Taiheiyouoki Jishin
Nihon ni iru gaikokujin no tame no johou

(英語 English)

2011 Japanese Earthquake and Tsunami
Information for foreigners living in Japan

IOM  website:

2011/03/01

OKO-Japan

2月20日(日)、海外カレン機構(日本)OKO-Japanの月例会議に途中から出席(高田馬場)。

日本社会に受け入れられるにはどうしたらよいか、という議論をみな熱心にしている。日本語能力向上のため日本語教室を開いたらどうか、という提案がなされる。

意見を求められたので、逆に、スゴー・カレン語なりポー・カレン語なりを日本人に教えられるようテキストを、既存のものを翻訳したりして作ったらどうか、という提案をする。

日本語を学ぶのももちろん重要だが、「カレン語学ぶならとりあえずOKO-Japanに」というぐらいに日本人に頼られる存在となるのも、日本社会に受け入れられるためには重要だと思うので。