2011/04/05

リテラシー(2)

在日ビルマ難民の諸団体でも、義援金を集めて被災地に送ろうという動きが盛んだ。ところが、ビルマ人の間で「赤十字に寄付すると、寄付金の1割が赤 十字の取り分になる」というメールが出回り、多くの団体が日本赤十字社の「東日本大震災義援金」に寄付するのをやめたのだという。

慈善団体が寄付金を掠め取ると聞いて、出した財布を一斉に引っ込めた、というわけだ。ブローカーなど怪しげな仲介者には喜んで金を支払うのにね。

BRSAの会議でもこの噂を受けて、会で募金するなら日本赤十字社に寄付しないで「ドラえもん募金」がいいと主張する人もいた。しかし、この人はドラえもんのポケットに入ったお金の一部は日本赤十字社に寄付されることは知らなかった。

この「1割横取り説」が間違いであることは、調べればすぐわかる。日本赤十字社のホームページには次のように書かれている。

この義援金は、今後、被災県で設置される義援金配分委員会に全額が送金され、同委員会で定める配分基準により、被災された方々に届けられます。(http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00002069.html

英語でも同じことが書かれているから、日本語なのでわからない、という言い訳は通用しない(http://www.jrc.or.jp/english/relief/l4/Vcms4_00002070.html)。

もちろん、書かれていることが本当だとは限らないが、そんなことが簡単にできるほど、日本の社会のチェック機能は弱くはない。そして、逆にいえばこれは、ビルマでは社会的な監視システムに対する信頼がまったくないということでもある。

また、たとえ寄付金の一部が運営費などに使用されるとしても、そのことがあらかじめ明記されており、目的と使途がはっきり報告されるのであれば、それほど拒否反応を示すべき事柄とは思えない。

それはさておき、ほとんどのビルマ人はこの噂を鵜呑みにするばかり、自分で調べようともしなかった。だが、そういう人に限って、「この人にお金を渡せば全額被災地に届けてくれる」だなんて口コミに乗せられて、1割どころか10割奪われてしまうのである。