2011/04/22

フライ人(3)

それにしても並ぶのも大変だ。幼児連れもいれば、妊婦もいる。喉も渇けば、オシッコもしたくなる。トイレを使わしてくれ、中のコンビニで買い物させてくれ、印紙を買わせてくれ、という連中がたびたび玄関前にやってきて追い払われていた。

入管の脇にあるコンビニに行けば、食べ物はほとんど売り切れだ。トイレも使用禁止と張り紙がしてある。これじゃみんなの膀胱が爆発しちゃう。

警備員に文句を付ける人や、なんだかわからないがカンカンに怒っている人もいたが、それでもたいていの人は静かに並んでいた。ただし、玄関周辺はゴミだらけ吸い殻だらけだ。

さ あ、8時半だ。入管の職員が玄関の自動ドアを開き、ビザ申請の列の先っちょを少し進ませる。「開いたらゆっくり入ってください! ゆっくり! ゆっく り!」 この列は2階行きのエスカレーターに接続される列だ。わたしは玄関前の職員に大声で言う。「仮放免の手続きで6階に行くんです! 列には並ばなく ていいっていわれました!」 相手が返事をする前に、わたしはパイロンで作られた柵を擦り抜けて、列の先頭に躍り出る。

「6階です! 6階です!」 そればっかだ。だが、他の人々ともども入管の職員にしばし押し止められる。そして職員の「はい! 進んで!」の声とともに、わたしはエレベーターにまっしぐら。