2011/04/22

フライ人(4)

6階はいつもの静けさ。下の騒ぎなんか嘘のよう。高天原というわけだ。目指すは「違反審査部門仮放免」の部屋、だが、ドアのガラス越しに見ると、暗い。節電だ。しかも、ドアには「行政相談申請受理は終了しました」というボードがかけてある。

さては気を抜いてやがるな。こんなに早く来る人間がいようとは夢にも思わなかったってか? 「さあ、朝だ! 朝だ! ぼやぼやするな! 身元保証人のおでま しだ!」とばかりに勢いよドアを開けるわたし。だが、薄暗がりの中佇んでいた職員に「9時からですよ!」と追い払われる。それで部屋の外で15分ばかり待 ちました。 玄関先であんなに必死になっていた自分はいったい何だったのかと自問自答していたので、あっという間だ。

9時に再び入室。顔なじみの職員の対応もいつもより親しげだ。「お待たせしました!」とにこやかに。わたしも「いや、下は大変ですね!」だなんてい つもはしない無駄口叩き。地震みたいな災難のあとでは誰だって懐かしい友人に見える。まったく和気あいあいとして「お互い様ですよ!」ってねぎらい合っ て。地上の「フライ人」たちの騒ぎから遠く離れて、ひそかな優越感を共有しながら。

さて、仮放免手続きそのものは、通常通りの運び。4階の会計に行って、それから田町の銀行で保証金を振り込み、再び入管に戻る(入管行きのバスにもとんでもない行列、仕方なく歩いた)。

入管のエレベーターに乗り合わせた職員たちの話を耳に挟んだところでは、15日は4800人の外国人が再入国許可に並んだとのことだ。おそらく16日はそれ 以上に違いない。そのうちの一人は5センチ以上ある紙の束を持っていて、それには「申請受理票」と書かれていた。もちろん、再入国許可申請のヤツ! 彼ら が2階でエレベーターを降りるとき、ひとりの女性職員が「さあ行くぞ!」と気合いを入れていたが、それほど混雑していなかったので「あれ、そうでもない か」と呟いていた。

実際、少なくともこの日は入管の職員たちは実にうまく申請者の大群を整理・誘導していたと思う。ま、並んでた人に言わせれば違うかもしれないが。

わたしがすべての手続きを終えて入管を後にしたのは10時半過ぎ。そのときには、入管前の道路を越えたところに列のシッポが作られてた。並ぶのに横断歩道 を渡らなくてはならないというわけだ。ひょっとしたら列の最後尾はもう上海あたりにあるんじゃあ、と思いながらバスに乗りました。(おしまい)