2011/05/16

難民キャンプ閉鎖(2)

そもそも、難民キャンプにいる人々はほんの氷山の一角なのだ。まず、カレン州には何万もの国内避難民がいる。これらの人々は難民キャンプに行きたくないか、行き着けないかのどちらかの人々で、ジャングルの中を逃げ回っている。

また、タイ国内にも、ビルマの人々が相当な数、移住労働者として住み着いている。これらの人々のほとんどは、必要がないから自分を難民として主張しないだ けの人々だ。いやそもそもタイは難民条約に加盟していないので、UNHCRを通じて難民キャンプに入らない限り、難民と認められることはない。だから、難民だが難民キャンプに入りたくない人はタイ国内では移住労働者となるしかないのだ(少なくともはじめの段階では)。

難民キャンプの人々が、強制送還以後、あるいはキャンプからの逃走以後、ふたたびタイに舞い戻って(これはとっても簡単)、これらの移住労働者グループに吸収されるのは間違いない。

そもそも、ビルマ国籍者の移住労働者の増加は、タイ政府にとってデリケートな問題だ。タイ政府がわざわざ移住労働者を増やすような決定をするはずがない。

そしてまた、難民キャンプの閉鎖は「難民キャンプの外には難民はいない」というタイ政府の建前すら崩しかねない。もちろん、タイ政府が難民条約に加わるならば話は別だ。だが、そうしたら、タイ国内は何万もの難民認定申請者で溢れかえることだろう。噂を聞きつけた国内避難民だって大挙してやってくる。今度は難民キャンプがあるからではない。せまっ苦しい難民キャンプが無くなったと聞いて、喜び勇んでやってくる。正々堂々と、難民認定申請書を片手に。

要するに、タイ政府の難民キャンプ閉鎖はまったく現実的ではないのだ。

では、なぜタイ政府はそんなことを言い出したのか?