2011/05/16

難民キャンプ閉鎖(3)

タイ政府がおよそ実行不可能な難民キャンプ閉鎖を言い出した背景は、隣国ビルマ政府との関係に配慮してとりあえずポーズを取ってみた、というのがもっともありそうな解釈だ。

それはまず、中国と同じくタイにとってもビルマの労働力と資源はその経済発展にとって不可欠だからである。また、カンボジア国境で紛争を、タイの南部でテロの問題を抱えるタイにとって、ビルマとの国境の安定は非常に重要なことにちがいない。少なくともタイ政府にとってビルマ政府と険悪になってよいことは何一つない。

しかし、ならば本当に難民キャンプを閉鎖してしまえばよいではないか、と考える人もいるかもしれないが、それは非常に難しい。すでに述べたように実質的に不可能であるというのがその理由だが、これ以外にも次のような理由があると思う(もっともわたしはタイ国内の政治状況についてはほとんど知らないので、これまで見聞きした情報から推測するにすぎない)。

1)難民キャンプの閉鎖による国際的非難。

2)難民キャンプを閉鎖することによる現地の経済的損失。
多数の国際支援NGOがやってきて地元に雇用を与え、現金を落としていくことから、しばしば「難民キャンプはビジネス」だと言われる。タイの中央政府にとってはともかくとしても、地元ではこれをいろいろな意味で利用している人もいるのである。

3)タイのカレン人の反発。
難民キャンプがある地域は、タイのカレン人が住む地域でもあり、タイのカレン人の政治家もいる。難民カレン人やその政治団体やNGOの働きにはこうしたタイ側のカレン人のバックアップがある。カレン人難民の対処を誤るとタイ国内の民族問題にも発展しかねないのである。