2011/07/21

勝利の美酒

今はそんなことができるとは思わないのだけれども、入管の収容施設内でお酒を造ろうとした人がいたそうだ。

もちろん、収容所の中では、お酒は持ち込むこともできない。したがって、これは密造酒だ。

製造法はというと、まず空いたペットボトルに水とバナナ、食パンを入れる。これらは収容所内の日常の食事などで容易に手に入るものだ。

そして、固く蓋を閉め、よく振って攪拌する。あとは、食パンの酵母が発酵を進めてくれるはず。

密造者は、このペットボトルを布団の下などに隠し、ひたすら待つ。

ペットボトルはまるで、孵化を待つ卵のようだ。卵につきものの「天敵」だっている。入管の職員のことだ。そう、入管の職員の厳しい監視をくぐり抜けたペットボトルだけが、開かれる機会に恵まれるのだ。

緊張の一週間。

密造者は期待とともにペットボトルを取り出す。ついに酒が醸されたのだ。おお、胸熱! 蓋を開けるやいなや、泡とともに吹き出る! 液体が、ドロッとしたヤツが、つまり、ゲロみたいなヤツが。

飲めたもんじゃねえ!

飲めたもんじゃねえが、密かな自由の味だけは何とか口にできたってわけで。