2012/09/24

タイガー・アンド・ワイルド・ボア

あるカレンの人に元気かと聞いたら「半分元気だけど、半分元気ない」と答えた。で、わたしは、その人がついこの間バンコクで左右の腕に虎を雌雄一匹ずつ入れ墨をしてきたのを知っていたので、「え、どっちの虎が元気ないの?」と冗談を言ったら、なぜか虎はメスのほうが強いという話がはじまって、めんどくさい流れになった。

ところで、北東インドにカルビ人という民族がいるが、その牧師さんが以前虎についてこんな話をしてくれた。村でまれに原因もなく狂乱状態に陥る人が出る。それはまったく手がつけられないほどで、その人は村人の制止を振り切って村はずれのジャングルまで行ってしまう。するとそこには必ず虎が待ち構えていて、食べてしまうのだという。

わたしはこの話を聞いてから、虎に興味を持ち、虎のことを知っていそうな人には必ず質問してみることにしているが、たいした成果はない。タイのメラ難民キャンプは山の中にあり、ビルマ側にはさらに大きな山がそびえているが、時折そこから虎の鳴き声が聞こえるという。わたしはその話を聞きながら、朝靄に煙る深山を感慨を持って見上げたものだが、ま、ホントかどうかはわからない。

それはさておき、そのカレンの人の虎の話は続く。なんでも山中で虎と野猪が闘って、猪が勝ったのだという。目撃していたカレンの村人がのちにその激戦地に戻ってみると、おそらく山犬が食べてしまったのだろう、虎の死体は跡形もなかった。それでその村人は高価な毛皮を手に入れる機会を失ったのだとか。