2013/02/01

民族の間

父がカレン人、母がカチン人という男性が日本にいる。

彼はかつて入管に収容されていたことがあり、そのときわたしは彼の頼みを聞いてあれこれしたことがある。

仮放免された後、わたしは彼をカレン人の団体に連れて行った。難民認定申請の助けになるかと思ってのことだ。しかし、基本的にカチン人の環境で育った彼は、カレン人の中では居心地が悪いようだった。

また、カレン人の中にも彼のことを受け入れたがらない雰囲気があった。

わたしは悪いことをしたと思い、彼をカレン人の集いには呼ばなくなった。彼はカチン人の団体に入り、その後、日本での在留許可を得た。

現在、彼はカチン人の女性と結婚し、数人の子もある。

この間、あるカチン人が彼のことをこう言っているのを聞いた。

「あの人はやっぱり心はカレン人だ」

どういう理由でそう言ったのかは知らないが、「純粋」なカチン人からも、カレン人からも本当には受け入れてはもらえない彼のことをわたしは哀れに思った。

彼の両親が民族の違いを越えて家庭を築いたのは、いつの日か息子がこんなことを言われるためではないだろう。

彼の父はビルマ軍の軍人で、暗殺されたという話だ。父亡き後、カチン人の母は息子をカチン人の中で育て、カレン人コミュニティとは疎遠になったのだ。