2013/04/06

その栄光がわたしたちを

アウンサンスーチーさんの来日に対して在日カチン人がどのような想いを持っているかについて、あるテレビ局が取材し、わたしはそれに少々協力した。

すでに以前書いたように、多くの在日カチン人は彼女の来日を歓迎してはいない。

それは、アウンサンスーチーさんが、ビルマ軍によるカチン民族への攻撃について今まで、公的に異議申し立てや停戦への呼びかけをするどころか沈黙しつづけていること、ビルマの国民全体のために自分が働くつもりならばすべきことを果たしていないということ、による。

これはカチン人(そして他の非ビルマ民族)にとって、彼女が少なくともカチン人を自分がそのために働くべき対象とはみなしてはいない、ということを意味する。

それゆえ、多くの非ビルマ民族は程度の違いこそあれ「スーチーさんはビルマ国民の指導者であって、わたしたちのリーダーではないのだ」という印象を抱いている。

このとき取材されたある在日カチン人女性は次のように言っていた。

「彼女はビルマ民族にとってはいいリーダーなのでしょう。ですが、わたしたちにとっては冷たい隣人です。友人ではありません。もっとも敵でもありませんが」

そして、スーチーさんが現在のビルマ政府が行っているカチン人に対する弾圧を咎めない以上、彼女はまさしくビルマ政府側の人間である。

そのような人間が、日本にやってくる。

数々の栄誉と賛辞を纏い、注目度と知名度の点では世界有数といえる(もっとも重要度の点ではわたしはかなり控え目に評価している)彼女のことだから、日本政府はもちろんのこと誰も彼も放っておかないだろう。

誰もが歓迎の声を上げて競うように群がり、祝福のおこぼれに預かろうと黒山の人だかりだ。贈り物と花輪で足の踏み場もない。肩を並べて写真をぱちり! その写真は今後名刺代わりだ。

在日カチン人女性はいう。「日本政府はこうした人をタダでは返しません。きっとお土産を持たすはずです」

願わくば、それがカチン人を撃つための軍資金ではないように。

わたしは知らん。だが、わたしには分かる。

わたしを迫害した者を人々がもて囃すことといったら!

熱烈歓迎! いと高きところに!

はるか下で怒りに燃える目をして我ら。

「わたしたちは」カチン女性の言葉だ。「苦しいのです。苦痛なのです。スーチーさんの来日は、わたしたちにとって脅威なのです」

スーチーさんがやってくることにより、自分たちの尊厳が脅かされる人々がいる。