2013/11/28

ブレードランナー(キムチ・カット)

今回のビルマ滞在中に韓国に出稼ぎに行ったことのある2人のカレン人に出会った。

とはいうものの1人は実際に韓国で働いていたわけではない。韓国の漁船に乗っていたのだ。

海の男というものはどこでも気性が荒いものだから,幾度か韓国人乗組員と衝突したとか,ロシアのどこかの凍り付いた海で,2月のひと月のあいだ船のなかでじっとしていたとか,『ブレードランナー』中の"I've seen things you people wouldn't believe...(お前たち人間には信じられないようなものを俺は見てきた……)"ではじまるあの有名な台詞をまったく彷彿とさせる。

この男性が船に乗ってまず困ったのは食べ物で,特にキムチがダメだったという。しかし,しばらくするうちに慣れて大好物になった。

もうひとりの男性は韓国の金浦の工場で4年間ほど働いた経験を持つ人で,作業中の事故で片手に穴があいた。その穴から「向こうが見えた」というが,今は傷跡のみ残っている。

彼もキムチはダメだった。

ヤンゴンの西にティリミンガラー市場(Thiri Mingalar Market)という大きな青果市場がある。

キムチを前にした彼が思ったのは「何だこのキムチってのは! ティリミンガラー市場の野菜クズ捨て場の匂いがするぜ!」

しかし,数日後にはお椀片手に「OK! キムチ! Come! Come!」という状態,その食欲を危惧した韓国人が「2つで十分ですよ!」と言ったとか言わないとか。