2013/11/06

囚人の希望

日本軍がビルマを占領していた時に,エーヤワディ管区のミャウンミャという町で起きた話なのだが,その辺りはカレン人が広く住む地域で,日本軍はたくさんのカレン人を捕らえ,ミャウンミャ市内の刑務所に入れた。

というのも,キリスト教徒の多いカレン人をイギリス植民地政府のスパイだと疑ったのである。

投獄された者のなかに,ある1人のカレン人がいた。彼は,他の多くのカレン人と同じく身にいわれのない罪で逮捕されたのであり,自分がいつか解放されることを祈っていた。

それは,可能性のないことではなかった。というのも,毎日のように,4〜5人のカレン人が房から外に出されていたから。彼は自分が同じように釈放されるのを待ち続けた。

そして,それらのカレン人が毎日,日本軍に射殺されていたのを知ったのは,彼が釈放された後のことだった。

この話をしてくれたのは,ある在日カレン人で,彼は子どもの頃この話を本人から聞いたそうだ。

日本軍はアウンサン率いるビルマ独立軍(BIA)とともにビルマに攻め入り,短い占領時代が始まるが,その間に多くのカレン人を殺した。

もちろんのこと,カレン人の中にはそのために日本人を憎む人も多いが,いっぽうで「カレン人を憎むビルマ人が日本軍をそそのかして殺させたのだ」とも主張する。

実際に,BIAはこの時期にカレン人に対する虐殺や集団強かんを行っている。

このような残虐行為は,次第に日本軍にも把握されるようになり,日本軍はBIAと一緒になってカレン人を迫害するのは控えるようになった。

この日本軍の「改心」については,もうひとつ興味深いエピソードがあり,それはカレン人を助けていた日本人医師が,カレン人への弾圧をやめるように軍に掛け合ったというものだ。

本当かどうか分からないが,この「改心」がなければ,知らずして自分が処刑されるのを待ち続けたあのカレン人が生き延びることもなかっただろう。