2013/12/02

インセインとピーマン(3)

さあ,夕食の始まりだ。

焼きそばに,豚肉のスープ。このスープがやたらと旨い。酸っぱくて辛くて。焼きそばも優しい味だ。おかわりに次ぐおかわり。わたしが成田空港で買ってきたお土産のウィスキーもみんな飲んじまった。

話といえば,ま,昔話だ。前世紀からの付き合いだからこりゃしょうがない。あいつはどうしてる,離婚した,病気した,野垂れ死んだ,飲んだくれてる,金の無心に来た,刑務所にいる,いい話はあまりない。それが人生だ,うわさ話というものだ。

で,「貴婦人」の日本での苦労話がはじまる。

「日本に来て,はじめて店で働いたとき,日本語なんてなんにも分からなかったから,大変だった。店長が『長ネギ!』っていうけど,全然分からない。でも,一緒にいたおばさんが親切だった。教えてくれた。長ネギを渡してこうやってとんとんと(輪切りに)切るんだと。わたしも一生懸命切る。すると次に店長が『タマネギ!』と叫ぶ。わたしはおばさんにこれが『タマネギ』だと教えてもらう。で,たくさんタマネギの皮を剥いて,芯をくり抜いて,下ごしらえする。そんな風に一日が終わって店長がやって来て言ったのは『このビルマ人,なかなかやるな!』」

毎年,日本でも行われているカレン新年祭の話も出てきた。1回目の時のだ(たぶん1999年)。

「あたしは徹夜でみんなの料理を準備したよ! 200人分のを,全部自腹で! それをなんだいあいつは(ある在日カレン人)! 『今からおばさんのところに料理を取りにいくから,タクシー代払って』だって。あたしは言ったよ! 『そんなんなら来ないでいい!』って」