2014/11/16

リアリズム演出

ビルマ(ミャンマー)と日本を舞台にした難民の家族の映画、『Passage of Life』の撮影で、エキストラとして集められたのはわたしばかりでなく、コーチングの藤由達蔵さん、前回のBRSAの集いでシャンの政治について話してくれた峯田史郎さんなど約8名。みんな専門の役者ではなく、この映画とどこかで接点を持つ普通の人々だ。

実際、映画ではプロの役者は日本人の主要な役のみに限られている。ビルマ難民の主人公家族も、それ以外の役も基本的に素人だ。演技未経験者を使うことでリアリティを生み出す狙いがあるとのことで、リアリズム演出の一手法だろう。

さて、撮影現場は王子駅前の大衆割烹「半平」、集合時間は朝の7時半。

昼食時のサラリーマンなので背広できてほしい、と担当の方は言っていたが、少々面倒くさかったし、出演者の來河侑希さんも何でもいいと言ってたので、普段着で行った。しかし、わたし以外のエキストラの人はみんなスーツ姿だった。

サラリーマンでなくても昼飯を食べる。エキストラから監督にひとつリアリズム演出の提案をしたというわけだ。

撮影はすぐに始まったが、まずは調理場のシーンからで、エキストラは関係ない。わたしたちの出番がやってきたころにはもう10時半になっていた。

監督の指図に従ってばらばらにテーブルに座る。わたしは端っこの小上がりに藤由さんと差し向いで座った。

まずガヤの録音をするという。ガヤというのは、音の情景みたいなもので、昼の食堂のガヤガヤした感じ出してほしいと言われる。

わたしは藤由さんと適当に会話を始めるが、どういうわけか、藤由さんが新興宗教教団の総務でわたしが木魚の営業ということになった。

総務「ウチの教団は来年立教25周年でね」

営業「ではぜひその機会に特別な木魚を! せんだってわたしどもはとあるお客様に5メートルの木魚を納品いたしました」

総務「なんと5メートル!」

営業「半径がですよ!」

リアリズム演出が台無しだ。

撮影風景。
奥で襟元を直してもらっているのが主役のアイセさん。