2014/11/20

ラーパイかラパイか

2013年にアジアのノーベル賞と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞したラパイ・センローさんだが、日本語ではラーパイ・センローと表記されることが多いようだ。

これはカチン文字の綴り「Lahpai Seng Raw」のLahpaiのhを、日本のローマ字表記式に長音記号とみてlah「ラー」と読んだためだろう。このやり方は例えば大山(Ohyama)と小山(Oyama)の区別には便利だが、カチンの綴りにはまったく関係がない。本当はLah・paiではなくLa・hpaiと区切るのが適当で、このhpはカチン文字では有気音のpを示すのに用いられている。

したがってあえてラーパイと延ばす必要はないわけで、ラパイと短くしたほう聞いた印象にも近い。

ところで、わたしが学生のころ、先輩たちが「キリスト」か「クリスト」どちらが正しいのか、延々と激論していたことがあって、わたしはそれを聞きながら、元のギリシア語の発音との対比においてはどちらも違うのだから 、こりゃキリストだけに救いようのない連中じゃわいと呆れたものだ。

だから、ラパイがラーパイより近いといっても、それはあくまでも程度の問題で、どちらも正確ではないし、結局のところ通じればよい。ただカチン文字にはカチン文字の仕組みがあるという当たり前のことを示してみたに過ぎない。


ラパイ・センローさん
(高田馬場、2014年11月16日)