2014/12/01

『アボーション・ロード』第7章 地の獄の囚人たち(2)

わたしたちが通されたのは二階の奥の会議室で、大きな会議机の周りに椅子が並べられていた。しばらくするとココジーとミンゼヤーがやってくる。ココジー! ミンゼヤー! 一九八八年以来の民主化運動の勇士! ビルマの政治改革を思う人なら誰でも知っている著名人! しかし、なんてこった、わたしゃ知らなかった! これはなにもわたしが悪いんじゃない。彼らを支援するためにわたしを日本から派遣した人たちがなんにも教えてくれなんだ。あんまり有名すぎて誰でも知ってると思って。まあいいさ、変わった外国人の無作法など二人ともあんまり気にすまい。スーチーさんに会いにインヤー湖を泳いで横断した迷惑アメリカ人に比べれば、当たりの部類だよむしろ。ネーミョージンはといえば、二人とは旧知の間柄だ。この場をセッティングしてくれたのも彼だ。わたしは自分の団体について簡単に説明し、88ジェネレーションのために日本のメンバーから預かってきた寄付金、三〇万チャット(約三万円)を手渡す。もう他にするこたないが、少々お話を聞いちゃおうっか、せっかくだし! でココジーたちのほうはといえば「一一時三〇分に予定があるから少しだけ」 わたしは彼に今の政治状況について大急ぎで尋ねる。

事務所の様子

『アボーション・ロード』「第7章 地の獄の囚人たち」についてはまえがきを参照されたい。