2014/12/06

『アボーション・ロード』第7章 地の獄の囚人たち(11)

あるカチン人の女の子がいた。親かなんかが、カチン人の武装組織、カチン独立軍(KIA)の関係者で、それで自分も命が危ないってんで日本に逃げてきた。当時二十才ぐらい。しかし、成田で上陸を拒否された。で、そのまま、茨城県牛久の東日本入国管理センターに送られた。その子には日本に親戚がいて、その人がわたしに身元保証人を頼んできた。そのカチン人はわたしの恩人みたいなもんだ断れない。面会に行くと精神的に参っている様子。そりゃこんな仕打ちを受ければ誰だってそうなる。で、言うことがおかしい。彼女はもちろん女性が収容されるブロックの房にいて、他に中国やらフィリピンやら他の女性もいたのだが、その部屋のテレビの後ろで女がひとり首を吊っているのを見たのだと。わたしと一緒に面会に行ったカチン人の女性は言った。「そんな幻覚を見るまで追いつめられてるんだ!」 それで、わたしは仮放免申請をする。幸いにもすぐ出られた……だが、彼女が見たのは本当はなんだったのだろう? 単なる幻覚なのか? いや……もしかしたら……ひょっとして……その房で以前本当に首吊り自殺した女がいて……入管職員がその遺体を片付け忘れただけでは?

お後がよろしいようで!

ココジーにインタビュー中。

『アボーション・ロード』「第7章 地の獄の囚人たち」についてはまえがきを参照されたい。