2014/12/02

『アボーション・ロード』第7章 地の獄の囚人たち(4)

ピース・アンド・オープン・ソサイエティ! 独立以来数々の戦争にまみれ、今まさにカチン人の土地で戦闘が行われているこのビルマで、そしていくつもの民族と宗教、さらには富裕層と貧困層とに分断されたビルマ社会で、平和と誰にでも開かれた社会を目指すだと? 面白い試みだ! もっともそう簡単じゃあないが……わたしは、いつからこのプロジェクトを始めたのか尋ねる。

「これは、われわれが釈放されてからすぐに始めた。二〇一二年一月一三日のことだ。この日、われわれのグループのすべてのリーダーが刑務所から釈放されたのだ」

じゃ、ネーミョージンといっしょってわけで!

「で、どれだけ刑務所にいたんです?」

「わたしは十八年。88ジェネレーションのリーダーのほとんどは少なくとも十年は入っているね。ミンゼヤーは十四年だ。われわれが下された最後の刑は電子取引法に基づくもので、これはまったく馬鹿げているよ。メール一通で十五年、四通で六十年だ。これに非合法団体で活動した罪で五年、法廷侮辱罪で六ヶ月、トータルで六十五年六ヶ月というわけだ。われわれみんな同じ刑だ。わたしの場合はその前の投獄では、まず国家非常事態法で二十年の刑、でなんとか終わりまで漕ぎ着けたと思ったら、釈放の日に国家防衛法で五年半追加されたよ。ミンゼヤーも他の仲間もみんな同じだ。われわれは青春時代を獄中で過ごしたのだ」

なんと十八年モノとは! バーミーズ・シングルモルトの名品、刑期少しもマッカラン! 堅牢な作りのカスクで熟成に熟成を重ねたというわけだ。わたしはすぐさま飛びついてその熟成の具合を確かめたくなった。だが、ちょっと待った。酒というものはその来歴を知ればもっと味わいが増すものだ。古谷三敏とファミリー企画の教えだ。ちょっと振り返ってみようじゃないか、その蕩尽された青春を! ……しかし、蕩尽されないでいる青春などあるもんだろうか?

ココジーとミンゼヤー

『アボーション・ロード』「第7章 地の獄の囚人たち」についてはまえがきを参照されたい。