2015/12/02

もうひとつの選挙(1)

ビルマで総選挙の投票が行われた11月8日、東京の片隅でも小さな総選挙が行われた。それは、日本に暮らすチン民族の政治組織、在日チン民族協会(CNC-Japan)と在日チン女性機構(CWO-Japan)の年次総会と役員選挙で、わたしは今年も選挙委員長として招かれた。

CNC-Japanの役員は、会長のニンザルンさんを含めほとんどが女性で、しかもその顔ぶれも毎年変わらない。

それは、ここ数年、彼女たちに代わって役員を引き受けようとする人が誰もいないからだ。つまり、多くの会員が、ビザを取った途端に活動に顔を出さなくなるので、役員をするだけの責任感の持ち主しか残らなくなるのだ。

もっともこれはチンだけの問題ではない。多くの団体でも同じことが起き、どこでも幽霊会員でいっぱいだ。これらの幽霊会員が享受している自由のいくばくかは、自分が所属している政治団体の政治活動、難民審査へのサポートとアピール、そして会員たちの苦労により獲得されたものに違いない。ならば、少なくともその分は会に貢献してくれるだろう……。だが、たいていの場合、役員たちのそうした期待は裏切られる。これら自由を我がものとした幽霊たちは、もはや「恩人」を顧みず、自分の人生を謳歌しだすのだ。もう成仏どころではないと言わんばかりだ。

とはいえ、わたしはそれは非難すべきことではないと思っている。というのも、誰にとっても自分の人生を生きることは重要であり、その経験なしには他の人間の生に関わること、つまり政治活動などできないからだ。

しかし、そうはいっても釈然としない、というのがCNC-Japanに限らず多くの活動家たちが抱いている思いでもある。