2015/12/11

田舎娘

わたしの世話になっているカレン人の娘さんが、今年の春に日本にやってきて大久保の日本語学校で学んでいる。

年は20歳。エーヤーワディ・デルタの小都市、ミャウンミャで生まれ育ち、留学前の数ヶ月をヤンゴンで過ごした。

彼女のいとこが日本に住んでいて、わたしは彼と2人で空港に迎えに行き、大久保の家まで連れて行った。

わたしたちは彼女の小さなスーツケースを転がして大久保の曲がりくねった路地を進む。ふと気がつくと、彼女はずっと後ろをノロノロと歩いている。わたしたちはしばらく待ち、彼女が追いついてから再び歩き始める。

だが、しばらくするとまたわたしたちと彼女との距離が開き始める。彼女はひどく歩くのが遅いのだ。しかも驚くべきことに、追いつこうとして焦っている気配すらない。

わたしはミャウンミャに何度も行ったことがあるから、すぐにピンときた。あそこはヤンゴンと違ってのんびりしているから、早歩きなどする必要はないのだ。

せわしない東京の暮らしにこの田舎娘は慣れるだろうか? ミャウンミャには車もたいして走っていないから、道なんかちゃんと渡れるだろうか?

そんなことを思ったものだったが、数ヶ月後、そのいとこから、彼女が大久保で道を渡ろうとしてタクシーに引っ掛けられたという電話がかかってきた。幸いなことに怪我はなかったとのことだ。

ミャウンミャの風景