2016/02/10

「我らが勝利の日:チン民族と全土停戦合意(NCA)」(15)

それはNCAがビルマ全土の平和に結びつくどころか、部分的停戦により撤退した部隊が、交戦の続く地域やこれまで戦闘のなかった地域に集中し、軍事的攻撃が激化するのではないかという危惧である。

この恐れこそ、非ビルマ民族諸組織の主張する「全土停戦」の根拠をなすものであり、真剣な考慮に値する。というのも、1990年代半ばのカレン民族同盟とカレン民族解放軍の弱体化の原因は、1992年のカチン独立機構とビルマ政府との停戦にあるという見方も存在するからである。つまり、停戦によりビルマ軍は軍事力をカチン地域からカレン地域に回すことができたためだというのである。

そして、現在皮肉にもカレンとカチンの立場は入れ替わったわけであり、今回の停戦がカチン側を苦境に追い込むとしても「カチンはNCAに関して何も言う資格はない」と厳しいことを言う者もいる。

しかし、わたしの見るところでは、KIOとビルマ政府との停戦はKNUの弱体化のひとつの理由であったかも知れないが、それがすべてではない。国際関係の変化、カレン人内部の意見の相違などさまざまな要因が関わっていると見るべきであろう。