2016/02/03

「我らが勝利の日:チン民族と全土停戦合意(NCA)」(9)

4. NCAの評価

このNCAについては主に3つの観点から否定的評価がなされている。一つはこの合意が全面的な平和をもたらさないというもの、二つ目は合意には実効性がないというもの、もう一つは署名に応じた代表の正当性に関わるものだ。つまり、NCAは見る人が見れば、それぞれの民族を代表しない人々が勝手に作り上げた無効な合意であり、それゆえビルマの平和という問題を本質的に解決するものではないというのである。

まず、最初の点、すなわち全面的な和平ではないという点から見ると、誰でも気がつくことだが、NCAが決してNationwide「全土」ではないということが挙げられる。つまり、停戦合意に署名したのはあくまでも一部なのだから、全土とは呼べないのであり、これを持ってビルマに全面的平和が確立されたとみなすことはできないというものである。

それは確かにその通りであるが、これはただ単に名称の問題に過ぎない。重要なのは、この合意が事態を平和に向けてどのように動かすかであり、その意味においては「全土」が将来的目標であっても構わないわけだ。もちろん例えば「限定的全土停戦合意」などと名付けた方が正確(あくまでも相対的には)かもしれないが、そのような名付け事態が、平和への動きに制限をつけるかもしれないのである。もしNCAがこのような名称であったら、おそらくどの組織も合意に署名することはなかったろう。