2016/03/03

ミスフィッツ

仮放免手続は、品川の入管の場合まず6階の仮放免部門に行き、身分証を提示する。その確認とコピーが済むと、その後4階の会計の窓口で、保証金納付の手続を行う。保証金をどこに納めるかというと、田町の三菱東京UFJ銀行内にある日本銀行の代理店だ。なのでそこに行って保証金、たいてい30万円を納める。そして再び帰ってきて、会計課で領収書を貰い、さらにまた6階に戻り手続が済んだことを報告する。すると、1時間後に再び来るようにいわれる。その間に「出所」の準備が進行するのだ。



1時間というが、もう少し早く出てくる。「生まれた」ばかりの仮放免者と申請人(わたし)は、別室に呼ばれ、職員から仮放免の説明を受け、同意書などに署名する。これで手続は終わり、あくまでも「仮」なので晴れてとは言えないが一応「自由の身」だ。

2月の初めにわたしは朝一でこの手続を始めた。早ければ11時過ぎには出てくるだろうと思っていたが、途中で別の被収容者に面会したりなどしていたので遅くなってしまい、入管の職員に戻ってくるように指定された時刻は12時30分であった。

しかし、わたしは午後に用事がありその時間までいたら間に合わない。

わたしは職員に「先に帰ってもいいですか」と尋ねた。以前、仮放免者が出てくる前に帰ってもいいといわれたことが何度かあったからだ。入管の人が「お忙しいでしょうからどうぞ」だなんて気の利いたことを言ってくれたりさえした。

わたしはそれを当てにしていたのだが、ダメだという返事だ。

しかもまるで「昔からそうでしたが」とでも言わんばかりの顔つきだ。腹が立ったがわたしももちろん昔のことなど蒸し返さない。とにかくやり方が変わったのだ。これが入管の掟だ。

だが、わたしは粘った。しまいには「では明日来るのでもう『1泊』ぐらいお願いします」とホテル感覚で頼んでみたが、もうほかの部門が動き始めているので無理だという。

この「方針転換」はもともとの規則の徹底化によるもののようだった。これは当然のことであり、わたしとしてもしょうがないと思うが、じゃあなんで以前はいいかげんだったのか。その責任は誰かとったのか。とまた腹が立ったが、結局、ありがたいことに、その職員はわたしが先に出るのを許してくれた。

しかし、もちろんただでではない。その人はわたしに警告することを忘れなかった。

「こう言ったことが続くと今後、あなたが身元保証人となった仮放免は認められなくなりますよ」

そういわれると「やっぱ待とうかな」という気になったが、考えて見れば、そもそも滅多に認められやしないのだから、たいした違いはあるまいし、また、認められなくなったらなったで、仮放免の身元保証人という面倒な役割を堂々と拒否する理由にもなるのだからそれはそれで結構なことだ。

いっそのこと、入管のあちこちに、「この者身元保証人不適格」と記したわたしの名前と顔写真を入管中に張ってほしいぐらいだ。念のため収容所内にも……というわけでお聞きください、史上最高のバンドの最高の1曲、The KinksでMisfits。

So take a good look around
The misfits are everywhere...